龍念寺は室町時代に青木三河守が築城したという城跡の南端に位置し、青木氏ゆかりの寺と伝えられる寺院である。開山は龍念、これまでに二度の火災に遭うなどして寺運の盛衰はあったが、人々の支えにより連綿と法燈が継承されいまに至っている。現住職で20代続く歴史ある浄土真宗本願寺派の寺院である。
本尊の「木造阿弥陀如来立像」は室町時代初期の、仏師三代湛慶作と伝えられる。寺宝として本願寺第八代「蓮如上人書掛軸(南無阿弥陀仏の六字の書)を保管している。
境内には大田原市指定天然記念物の「青木のシダレザクラ」を有す。樹齢約190年~200年と推定され、樹高約10メートル・枝張り東西約14メートルの大木である。毎年春になると糸桜とよばれるにふさわしい端麗で美しい花を咲かせ人々の心を和ませている。
(2021年3月撮影)
(2012年4月撮影)
ちなみに、史実かどうかは定かではありませんが、浄土真宗の宗祖である親鸞聖人が9歳の時、出家得度に臨まれる際に詠まれたと伝わっている歌があります。
「明日ありと思う心のあだ桜 夜半に嵐の吹かぬものかは」
夕暮れ時になり出家得度の儀式を明日にしようかと師から伝えられた際に、「仏法には明日ということはない。いま得度の式を行い仏道を歩まなければならないのです」という出家得度に臨む親鸞聖人の固い決意を詠んだ歌として語られるものです。散りやすい桜の花びらをはかない人のいのちに例えられた名句として伝わるものであり、龍念寺のシダレザクラを通して「諸行無常・すべてのものは移り変わり変化していく、だからこそ、今この一瞬を精一杯生きなさい」という仏教の教えを同時に味わいたいものです。