9.慈善と宗門帳

安政年間の正月四日のことである。この日は宗門帳をもって藩の役所に行く日であった。前夜より雪が降り続き、まれにみる大雪となった。積雪二尺余(60センチ)の雪であった。慈善はその朝、宗門帳を携えて四つ(午前十時)までに役所に行かなければならなかった。慈善は供を連れ、足袋に草鞋をはいて、その大雪の中を強行し、定められた時刻に出頭した。藩内の全寺院が集まるべきなのに、近くの寺を除いてほとんどの寺院が来なかった。受付にならず翌日ということになり、町内の知り合いの家に泊まり、翌朝、前日欠席の寺院の謝り役を慈善が代表して申し述べ、詫びたのであった。早速受付になり無事宗門帳を渡し、事が済んで、新年の酒を頂き寺に帰った。それ以後、慈善は藩に対し、大変に通りがよくなり、後に開墾指導も都合よく藩で取り計ってくれた。

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